今回は前回の続きで、『彼女の最初のパレスチナ』という本の作品を紹介しながら
自分の考えたことを書いてみようと思います。
「人生を楽しめ、カポ」
カポは、娘フィルダウスの病気をきっかけに、あるシステムを開発しました。
それは本来、娘を守るためのものでしたが、彼はロメロと共に、
それを売る仕事に関わるようになります。
一方、娘のフィルダウスは、ガザやイスラエルの状況についてSNSで発信するようになります。
しかし学校から注意を受けます。
そんな中、なかなか売れなかったカポとロメロのそのシステムが、
莫大な資金と引き換えに、イスラエルに売られることがわかります。
ロメロは迷わず取引を進め、カポは、自分の娘のために作ったものが、
結果的に武器として使われることに強い戸惑いを覚えながら、その交渉に応じることにします。
それを知った娘フィルダウスは、あれだけ投稿を削除されることを拒んでいたのに削除し、
投稿の内容をイスラエルの国旗の写真とともに激高と敗北を感じさせる内容をSNSに投稿しています。
この物語を通して強く感じたのは、
同じパレスチナの人々であっても、決して一様ではないということです。
グラデーションの人間模様
ここに出てきた3人は、同じパレスチナ人であり、厳しい政治体制や環境で生きている。
でも、その3人がそれぞれ同じような感情や統一した思想でいるわけでは決してない。
それぞれの立場で、それぞれの感情、そして行動、信念のようなものに従って生きています。
本来、一人ひとりが違うのは当然のことです。
しかしどうしても「パレスチナ人」などといった大きな枠組みにはめてしまうと
その違いや揺らぎに気づきにくなったり、見えなくなってしまう。
こと、私たちとは大きく異なる世界のこととなると、尚更そのような状況になりやすいと思います。
解像度を上げて、物事を見てみること、そしてそこにはそれぞれの生き方が連なり合う、
グラデーションのような人間模様が広がっている。
この物語は、そのことに気づかせてくれたように思います。
二項対立ではない世界
もう一つの視点として、善悪では割り切れない二項対立ではない世界があると感じました。
最後の娘フィルダウスのSNSの削除とそして新しい投稿の部分の意味を考えると、
自分の信念の行動、その逆風としての学校の対応、何よりも父カポの行動、
これら一連の流れから、娘フィルダウスは「現実はこういうものなんだ」と突きつけられた
のではないでしょうか。そして自分ではなにもできない無念さ信じていたものを失った悲しみ。
こういうものが静かに伝わってきたように思います。
それとは逆に、この話の最後の最後に、ロメロがカポに送ったメール「人生を楽しめよ、カポ」
お金を稼ぐことに力を注いでいたロメロの言葉は、
この文の通り本心から楽しめと思っているというよりは、
何か無責任感というか、投げ渡されただけの言葉のように感じます。
全ての状況を知っているにも関わらず、その問題に関わらずにいるような感じもします。
これらをみると、ロメロが悪、娘フィルダウスが善であるような感じを受けなくもありません。
しかしながら、これらは
その人々のそれぞれの立場や置かれている環境によって、
そうせざる得なかった、そのような選択肢を取る可能性が誰にでもあるのだろう
ということを感じさせるものだと思います。
だから、これらのことをはっきりと善と悪という二項対立では語ることが
できないのではないかと思います。
まとめ
こうして三つの話を見ていくと、
これらのお話ははっきりとした答えが見つからないようなラストになっています。
だからこそ、登場人物の言葉や態度が、読者の心に残って色々と思いを巡らせるような
仕掛けになっているのではないかと思うのです。
そうした、わからなさをわからないままであること、それ自体を感じさせる本でもあったと思います。
まとめてとして、私がはじめに出した「共通性と異質性」について書いてみようと思います。
異質点として
パレスチナとイスラエルという、あまりにも大きな政治的・歴史的対立
私たちの「平和な日常」では想像しきれない葛藤や選択
これらは、今の日本で暮らすわた私には想像しても想像を超えることがあると思います。
そうした点からも大きく異なる部分だと思います。
だからこれらの話が私たちとは遠い話というわけではなく、共通性があると思います。
生活のためにお金が必要
家族を守りたいという気持ち
声を上げたいが、抑え込まれる経験
理想と現実の間で折り合いをつける苦しさ
正しい選択をしても、報われない現実
こうした部分は根底では似ている部分があるとおもいます。
国や生活が違ったとしても、それぞれの生きている環境において、
悩み葛藤することは変わりがないのかもしれません。
こうしたあいまいを抱えながら、私たちは同じなんだと思うことで、遠いと思う人々に
思いをはせることができるのかもしれません。

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