前回に引き続き『フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養 岩竹美加子』から
私が学んだことを書いてみようと思います。
今回は本書にも幾度か出てきた「批判的思考」について書いてみようと思います。
批判的思考という言葉はよく聞くけれど、どういうことなのか、どうして必要なのか
ということに興味を持たれた方に読んでいただければいいなと思います。
どうして批判的思考が必要であるか?
そもそもどうして批判的思考って必要なのって疑問に思った方はおられないでしょうか?
実は今の時代特に必要な思考だと言って良いと思います。
本書によると、高校生にはバッチリと「批判的思考」という項目があり学んでいます。
そのような背景からも、若い世代であっても必要なスキルと言っていいのではないかと思います。
では具体的に見ていくことにします。
本書によると
哲学的・道徳的な問いを探求するには、言われたことや慣習となっていることなどを
信じるのではなく、深く考える批判的思考が必要になる p196
と書かれてあります。
さらに
本書(「人生観の知識」の教科書より)
インターネットの時代、情報源の批判的なチェック、論拠の検証、ニューズを読む力が、
以前にも増して重要になっている。そうでないと、誤った情報に知識に基づいた判断や
決定をしてしまうことになる。
とも書かれてあります。
ここでポイントとなるのは
哲学的・道徳的な問い、具体的には、人がよりよく生きることを考えるの必要な思考である
ということと、インターネット時代、莫大の情報があるような世の中を良いよく生きるために
必要な思考である
ということが言えるのではないかと思います。
特に私が注目をしているのは
「莫大な情報量と偽情報そして情報の権力化」
という世の中のあり方です。
現在は、過去に例がないほど情報が溢れかえっています。情報爆発が起こっています。
そして、その中には偽情報やフェイクニュースというものも大量に含まれています。
それらが存在しているSNSでは、ターゲティング広告というようなビジネスの仕組みが存在し、
恐怖や煽りというような心理的なものを利用し、それらを増幅することにとり、
儲かるシステムになっているというようなことがあるのだと言います。
その結果、とんでもないパワーを有することになり、見えない武器としての役割を
果たしていることがあると言います。
ちなみに
これらはNetflixの『監視資本主義:デジタル資本主義がもたらす光と影』というドキュメンタリーや
『偽情報と独裁者 SNS時代の危機に立ち向かう マリア・レッサ 訳竹田円』という本を見ると
それがよくわかります。これらはおすすめです。
何気なく見ているSNSなどの情報を無条件そして感情的に信じてしまうことにより、
とんでもないパワーの片棒を担ぐことになっていたり、アルゴリズムによって、
自分にとって耳障りのいいものや、偏りの生じる情報ばかりを大量に摂取し、
自分は知識を有しているような気になってしまう、もしくは自分の意見が正しいのだと
いうような感覚を持つ、フィルターバブルだったり、エコーチェンバーという現象になってしまう
のではないかと思います。自分で選んでいると感じている情報も実はテック企業によって、
操られているとも気づかずに、、、その現象も怖いなと思います。
そうした何気なく手軽に得られる情報から、そうした現象が起こってしまう怖さがあるからこそ、
常時、批判的思考の目線が必要であるとされているのだと思います。
批判的思考とはどのようなことをするのか?
恐怖心だけを植え付けたようになっていますが、それから回避するために、
では批判的思考とは具体的にどのようなことをするのか?
行動1:疑ってみよう
本書(「人生観の知識」の教科書より)より引用すると
批判的思考は、疑ってみること。人の主張をすぐ信じるのではなく、
どういう根拠で信じられるかを明らかにする。
疑ってみるというのは、何も信じてはならないということではない。(一部省略)
簡単に信じすぎることは、危険をもたらすこともある。p197
とあります。
批判的思考の基本概念は、言葉通りであり非常にわかりやすいです。
ここで注目したことは
疑ってみるというのは、何も信じてはならないということではない。という一文です。
私だけかもしれませんが、「疑う」というのは、ネガティブな行為のように受け取ってしまう傾向が
あります。それゆえ、「疑う」という行為をしづらいような感覚があります。
しかし、このネガティブな感覚は、全てを信じてはならないというような思いからきている可能性が
あり、それを否定してくれているのは、心強いと感じます。
感情だけで行動するのではなく、客観的な視点、理性的に考えることのを指摘している文で
あるように思います
行動2・理性的な判断をしよう
再び本書(「人生観の知識」の教科書より)より引用すると
明確さと正確さが、批判的思考の要になる。
よく知らない言葉は注意を深く使い、複雑なことは言いやすく言い換える。
言葉の定義を同じにすることが大事だ。p198
さらに
批判的思考は、なぜある主張を信じることができるか知ろうとする。
そして、それに同意、または反対するための根拠を天秤にかける。(一部省略)
そしてそれを天秤にかけ、どちらに重みがあるかを考えて結論を出すこと。
批判的思考は理性的だ。(一部省略)異なる選択肢を正確に考え、論理的に結論を出す。p198
批判的思考についてわかりやすく説明されています。
ここで大切だと思うことは、
相手を負かしてやろうとか、論破的に話を終わらせようとしないで、
相手の主張や根拠を知ること、
そこから、
感情的ではなく、理性的にどう判断するのか
というプロセスが重要であるということだと思います。
また、その際にきちんとお互いの話を理解するために、
共通の言葉、意味を理解することが重要だと思います。
このあたりは以前紹介した『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?今井むつみ』の本が
参考になるのではないかと思います。(関連のブログを↓に貼り付けておきます)
行動3・事実はなんだろう?
重要なこととして引き続き、本書から引用すると
事実と意見を区別すること。科学的な知識、信頼できる情報とできない情報、情報源の峻別。
(一部省略)メディアを峻別する、メディア批判が必要になる。 p199
とも書いてあります。
真実と意見、これの区別はできそうで意外とできていない場合もあると感じます。
しかし何を持って真実とするのか、これも難しい問題ではあります。
しかし、ある根拠にしようとするもの、例えばネットに書かれた記事、何かの論文、SNS、
メディアといったそれらの情報や知識は、どの程度の信頼性があるのかを考えるのも
大切な視点だと思います。
情報が過剰にある中で、どうしたものが信頼性があるのかというのを考えながら見る
というのはなかなかハードな作業だとも感じます。だから簡単に流れてくる情報を簡単に信じて
しまう。また、簡単に思考使わずに見れる、それがSNSの良さでありますが、それらばかりを見て、
情報を毎日大量に摂取すると、その情報を信じてしまうことも起こり得てしまうでしょう。
こうした簡単さ、手軽さの中に何か危うさがあるのではと感じてしまいます。
だから一つの指標として、手軽さ、簡単さで得た情報は、冷静に判断しようという
シグナルになるのかもしれません。立ち止まれの合図。
行動4・自分自身を疑え!
批判的思考の中で難しいこととして取り上げられているのが
本書(「人生観の知識」の教科書より)から引用
批判的思考で最も難しいのは、自分の考えや思うことを批判的に見る自己批判だろう。
(一部省略)
心理学では、人間の認知バイアスについて多くの研究がなされてきた。
その中でもダニング=クルーガーの効果がよく知られている。
あるテーマ、例えば予防接種について最も知らない人は、しばしば自分の無知について
最も無知である。
そして、無知であればあるほど、自分の知識に対する誤認が大きくなる。p200
とあります。
ここで一つ。フィンランドの「人生観の知識」の授業の特徴である、
いろいろな分野の横断がここでも見られます。心理学用語をさりげなく取り入れています。
これは面白いですね。
さて話を戻し、
無知であるからこそ、慎重になること、自分の知に謙虚であることが必要であるのだろうと思います。
まとめ
批判的思考というのは、感情に流されることなく、多角的に物事を考えることであります。
根拠とか、批判とか少し硬い言葉が多くあるので難しく考えてしまいそうですが、
その根底には、相手を知ろう、そこから新しい意見を得ていこうとするポジティブな共同の営み
であるのではないかとも思います。そのような建設的な視点で考えると、感情的な視点ではなく、
論理的な視点が持てるのではないかとも考えます。
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